Nikon D750を使っていた頃はf/2.8通しのズームレンズを好んで使用していましたが、Z6のシステムではf/4の通しのズームレンズでやっていく予定です。
NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sは発売と同時期くらいから中古市場に溢れていたので正直なところ色々と不安だったのですが、実際に使ってみると想像以上の実力を発揮してくれたので安心しています。
今回はそんなこのレンズをレビューしていきます。
スペック比較

まずは以前に使用していたAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDとスペックを比較してみます。
商品名 | NIKKOR Z 24-70mm f/4 S | AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED |
---|---|---|
マウント | Zマウント | Fマウント |
レンズ構成 | ★11群14枚(EDレンズ1枚、ED非球面レンズ1枚、非球面レンズ3枚、ナノクリスタルコートあり、最前面のレンズ面にフッ素コートあり) | 11群15枚(EDレンズ3枚、非球面レンズ3枚、ナノクリスタルコート1面) |
最短撮影距離 | ★撮像面から0.3m(ズーム全域) | 0.41m(焦点距離24mm)、0.39m(焦点距離28mm)、0.38m(焦点距離35mm-50mm)、0.40m(焦点距離70mm) |
最大撮影倍率 | ★0.3倍 | 0.26倍 |
絞り羽枚数 | ⬇︎7枚(円形絞り) | 9枚(円形絞り) |
絞り方式 | 電磁絞りによる自動絞り | 自動絞り |
最小絞り | ⬇︎f/4 | f/2.8 |
最大絞り | f/22 | f/22 |
フィルターサイズ | 72mm | 77mm |
質量 | ★約500g | 約900g |
生産国 | タイ製 | 日本製 |
僕の独断と偏見により良いなと思う部分には★、いまいちな部分には⬇︎マークがつけてあります。
僕が以前所有していた旧型レンズと比較するとレンズ構成とコーティングが良くなっています。
キットレンズなのに非球面レンズやEDレンズが多く組み込まれており、ナノクリスタルコートに加えてフッ素コーティングもされています。
10年前の高級レンズと同等のレンズ構成を実現できるのは技術革新によって加工の難しいレンズの生産コストが下がったことと、海外生産で人件費を抑えているためだと思います。
そのほかに特筆すべき点は他のズームレンズよりも最大撮影倍率が高いので被写体に寄れるということ、約500gと軽いことがこのレンズのスペック上のメリットです。
⬇︎マークをつけた部分はf/4のキットレンズという立ち位置では仕方がない部分なので、ここに不満を感じるようであればクレジットカードを握りしめてf/2.8の世界に飛び込むしかないのです。
AFのスピードや精度に関してはAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDと比較して同等かそれ以上だなという印象です。
Zマウントレンズは動画撮影も見据えた設計になっておりSTM(ステッピングモーター)の採用でAF機構と絞り機構の静音駆動を実現しています。
外観をさらりと紹介

このレンズの最大の特徴は沈胴式機構を採用しているところです。
最初は違和感でしたが持ち運ぶ時に縮めて収納できるので僕は便利だと思っています。
ズームリングの下にあるコントロールリングはピント合わせ以外に露出や絞りを任意で割り当てられるのですが、僕はピント調整のまま使用しています(クリックレスで露出や絞りが変更できる機能は動画の時に便利です)。

当然のことながらレンズを沈胴させたままだと撮影できないので、頻繁に使う時は24mmの状態でぶら下げています。
24mmの状態だと力を入れて引っ張っても鏡胴が伸びていかないのは良心的な設計だと思いました。

望遠側の70mmまで伸ばすとわりと長くなるなーという印象です。

沈胴させた状態だとマウントの裏面までぎっしりとレンズが詰まっています。
Zマウントレンズの設計はだいたいこんな感じなので、レンズ交換の時にうっかり手を触れたり傷つけないように注意が必要ですね。
ボディに装着した俯瞰図はこんな感じです。



作例紹介!

僕が不安だったのは正直なところキットレンズで満足できるのかということだったのですが、以前使用していたAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDよりも画質の向上と取り回しの良さを感じられるレンズでした。
これがキットレンズで付いてくるというのは凄いことかもしれませんね。
逆光耐性での作例

まずひとつ目にNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sは逆光耐性が素晴らしいと思います(Zマウントレンズは全般的に逆光での描写が素晴らしい)。
太陽などの強い光源にレンズを向けてもフレアやゴーストがほとんど発生しないことと、逆光でも高い解像度とコントラストを維持しています。
太陽を見ても眩しくない電子ファインダーのおかげで逆光でのシャッターチャンスも増えたように思います。

光の入射角によっては僅かにフレアやゴーストが出ますが、それをうまくコントロールして構図を作ってみようかなと思わせてくれるレンズです。

上二つの太陽の光芒が伸びている写真はf/22で撮影したものです。
絞り込むほど光芒が伸びてシャキッとしていくのは全てのレンズに共通することだと思いますが、自分が好みの光芒が出現する絞り値を見つけるのも一つの楽しみですね。
三脚を使用した作例

風景写真で気になるところは三脚に据えて撮影した時にどれだけの実力を発揮してくれるかということだと思いますが、この点に関してもとても満足しています。
上の写真はイランのエマーム広場で撮影したものでF値16まで絞っています。
今まで使用していたFマウントレンズと比較すると隅々までビシッときまっている印象を受けました(それだけ解像度が高いということですね)。
NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sは絞り羽が7枚なので14本の光芒が出ています。
光源が弱いせいなのか光芒の伸びがあまりないように思いますが、光芒の形は均一で控えめな感じが逆に良いかもしれませんね。
ニコンの高級レンズは絞り羽が9枚になるので、18本の豪華な光芒が出したいのであればそちらを選択するのが良いと思います。

イランのエスファハーンにあるスィー・オ・セ橋。
こちらはNDフィルターを使用した作例です。
レンガの質感をよく再現していると思いました。
NIKKOR Z 14-30mm f/4 Sレンズのフィルター径が82mmなので、そちらに合わせてNDフィルターを購入しています。
72mm→82mmのステップアップリングを使用すればNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sでも82mmのフィルターが使用できるようになります。
フィルターは大きいレンズに合わせて買っておくとステップアップリングで使いまわせるのでおすすめです。
街でのスナップ

パリの凱旋門。
観光で歩き回る時にカメラの軽さは正義。

こういう細かい被写体を写すと一昔前のシステムと比較して解像度の向上がよくわかるのですが、スマホの画面で見るとそんなによくわからないというのが悲しいところではあります。
でも僕は普通のカメラで写真を撮ることが好きですし、ニコンの新しいシステムの提案に賛成です。

イランのシーラーズ にて。
ミラーレスカメラの小さいシステムのおかげで被写体に違和感を与えずに、その場の風景をそっと持ち帰ることができるようになったと思います。
こういうシーンで建物や細かい木々の境界線にフリンジが一切出なくなったのもありがたいですね。

水面の滑らかさや生き生きとしたオレンジの木々がよく再現されていると思います。
僕は元々コントラスト高めの写真が好みだったのでニコンのZシリーズの絵作りが気に入っています。

写真のぬけ感がとても良く、PCのモニターで確認すると手前の木々が細部まで解像しています。
レンズの解像度に関してはFマウントから明確に改善したポイントだと思います。

解像度とコントラストが高いので水面の質感なんかは得意そうですね。

寄れるレンズなのでテーブルフォトにもGoodです。
絞り開放から高い解像度を維持しているレンズですが周辺減光があるので、周辺減光を意図的に使う表現でなければ開放から1〜2段絞って撮影した方が良いと思います。
f/2.8を諦められるか…?!

元f/2.8レンズユーザーがf/4レンズを使用して満足できるかという問題ですが、f/4レンズでできないことをしっかりと理解して取捨選択すればまずまず納得できます。笑
僕が写真展で展示した写真のほとんどはf/8以上に絞ったり三脚に据えて撮影したものだったので、結局のところ絞って撮影するのならf/4でも良いかなと思っています。
僕がf/4の標準ズームレンズに変えて割り切った(諦めた)表現を箇条書きにすると以下のような感じです。
・70mm+f/2.8で背景を大きくぼかしたポートレートやブツ撮り
・高速で動く被写体や暗いシーンでf/2.8でシャッタースピードを調整すること
・24mm f/2,8で星空の撮影
逆にこの部分の表現が諦められないのであればf/2.8が必要だと思います。
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 Sレンズは定価で30万円くらいしますから、この値段を出すのであれば他のレンズを買ってもっと別な表現を試してみたいという結論に至りました。
まとめ

ニコンZシリーズが発売されてからNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sが大量に売りに出ていたので、あまり良くないレンズなのかなと心配していましたが全くそんなことはありませんでした!
このレンズを買う前にニコンのホームページでNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sの解説や作例を見ても「ああ、普通のキットレンズなのね」という感想しか出てきませんでしたけど、実際に使ってみると旧型のFマウントレンズよりも基本性能の底上げを感じます。
既存のFマウントレンズと新しく出るZマウントレンズの位置関係を考えるとこのキットレンズの宣伝が難しかったのかもしれませんが、NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sの性能をニコンがもっとアピールしても良かったのでは??と思うほどです。笑
NIKKOR Z 24-70mm f/4 SがSラインという高い光学性能を持つレンズに分類されるだけのことはあるなと思いました。
沈胴式機構は慣れるまで違和感がありましたが、最近では持ち運ぶ時に小さくなって便利だとポジティブに捉えるようになっています。
旅行で使用するメインのレンズはNIKKOR Z 24-70mm f/4 Sで大丈夫そうだと思えたので、しばらくはこのシステムでやっていきたいと思っています。
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