ズームレンズでAFが使えるというのが現代カメラシステムの大きなメリットではあるのですが、やっぱり単焦点も使ってみたくなるわけです。
ズームレンズに比べる明るいレンズになるので背景を大きくぼかした写真が撮れますし、画角を決めて写真を撮る楽しさもあります。
今回は、Zマウントの単焦点レンズを選ぶときにどういった点に着目したら良いのかということを書いてみたいと思います。
ここでは僕が実際に所有しているNIKKOR 35mm f/1.8 S、NIKKOR 50mm f/1.8 Sで話を進めていきたいと思います。
撮りたいイメージをもとに考えてみる

まずはそのレンズを買ってどんな写真を撮りたいのかを考えていきましょう。
単焦点レンズが初めてであれば標準ズームレンズの真ん中あたりの画角のレンズを選ぶのが良いと思います。
中でも35mm、50mmという画角は大昔からテッパンで、撮影者の意図や技術によって幅広い表現ができる焦点距離でもあります。
それぞれのレンズの特徴をざっくりとまとめてみます。
- 広角レンズに分類
- 人物+背景を写すのに最適
- どちらかといえば風景写真向き
- 被写体を印象的に切り取れる
- 35mmに比べて大きなボケを得られる
- 風景メインでは狭く感じることもある
35mmはわりと広い範囲が写るのでなるべく余計なものが入らないように気を使います(それが楽しさでもありますが)。
50mmは写る範囲が狭いので被写体の質感や表情に寄りたい時に便利で直感で撮れて楽しいのですが、風景を切り取る時には狭さを感じることがあります。
50mmだと風景の全景を納めようとせず部分的に切り抜くという割り切りが必要になることも多くあります。
スペック、ボケ味、光芒で好みを考えてみる

撮りたいイメージがなんとなく決まってきたら、欲しいと思うレンズの詳細を見ていきましょう。
大事なのは撮りたいイメージの方ですが、レンズスペックなどの詳細を見ていくことで欲しいものの確信が得られることがあります。
まずはスペックの比較からです。
NIKKOR 35mm f/1.8 S | NIKKOR 50mm f/1.8 S | |
---|---|---|
絞り方式 | 電磁絞りによる自動絞り | 電磁絞りによる自動絞り |
最短撮影距離 | 0.25m | 0.4m |
最大撮影倍率 | 0.19倍 | 0.15倍 |
最小絞り | f/1.8 | f/1.8 |
最大絞り | f/16 | f/16 |
レンズ構成 | 9群11枚(EDレンズ2枚、非球面レンズ3枚、ナノクリスタルコートあり) | 9群12枚(EDレンズ2枚、非球面レンズ2枚、ナノクリスタルコートあり) |
質量 | 370g | 約415g |
絞り羽根枚数 | 9枚(円形絞り) | 9枚(円形絞り) |
フィルターサイズ | 62mm | 62mm |
マルチフォーカス | ◯ | × |
価格 | 約10万円 | 約7万5千円 |
スペックの比較からわかることはNIKKOR 35mm f/1.8 Sの方が寄れるレンズで、マルチフォーカスシステムが採用されているため軸上収差がより出にくくなっています。
マルチフォーカスシステムとは、2組のAF用駆動ユニットの連携で2つのフォーカス群の位置をミクロン単位で厳密に制御し、近距離の収差を劇的に改善しながら、極めて高いピント精度と高速なAF制御を実現。

風景写真を開放で撮影した時にもフリンジやサジタルコマフレアがよく押さえられていると思うので、NIKKOR 35mm f/1.8 Sに搭載されているマルチフォーカスの恩恵をなんとなく感じています。
次はボケ味を見てみましょう。
左のNIKKOR 35mm f/1.8 Sの方がなんとなくボケ味が滑らかに溶けているような感じがします。
開放での周辺減光はNIKKOR 35mm f/1.8 Sの方がキツめですね。
次は光芒の作例を比較します。
両方とも最大絞りのf16で撮影したものです。
NIKKOR 35mm f/1.8 Sは鋭い光芒が出ますが、NIKKOR 50mm f/1.8 Sは光芒が出てきません。
両方とも逆光耐性は素晴らしいですね。

絞った時の光芒の出方が全然違うので風景撮影メインの場合だとNIKKOR 35mm f/1.8 Sが便利かもしれませんね。
個人的に好きなのは50mm

スペックだけ見ると寄れるしマルチフォーカスのおかげでなんとなく画質が良さそうなNIKKOR 35mm f/1.8 Sにベストに思いますが、個人的に好きな方はNIKKOR 50mm f/1.8 Sです。
NIKKOR 50mm f/1.8 Sの方が2万5千円ほど安いのですが、NIKKOR 35mm f/1.8 Sに画質が劣っている感じはありません。
50mmは画角が狭いぶん自分が印象に残ったものを素直に切り出すことができます。

全景が撮りきれないのが逆に良くて、普段使っている脳とは別の部分を使って撮影しているような感じが好きです。
光の印象だけを切り取ったり、屋根だけ切り取ってみたり、人それぞれ自由です。
たまにズームレンズから変えてみると楽しいですね。
旅に持っていくなら35mm

さっきはNIKKOR 50mm f/1.8 Sの方が好きとか言いましたけど、旅に持っていくのであればNIKKOR 35mm f/1.8 Sが良いと思っています。
35mmという画角は風景写真が絶妙に収まったりすることがあるのです。
そんな場所で三脚が使えたら最高で夜景であればシャキっとした鋭い光芒を出すこともできます。

暗いシーンを手持ちで撮影する時にもISO感度が上がりすぎないので、そういった使い方の時にもNIKKOR 35mm f/1.8 Sの方が良いと思います。
絞り開放でフリンジが出てこないのもNIKKOR 35mm f/1.8 Sの良い点だと思います。
夢のない話をしますが、最近のカメラは高画素化が進んでいるので、2000万画素くらいのカメラで35mmを50mmの画角にトリミングしてもA4くらいの印刷であれば十分な画素が残っています。
あとはNikon Z50などのAPS-C機につければ1.5倍の焦点距離になるので35mm⇨52.5mmの画角になります。
50mmを35mmの画角に変えることはできませんが、35mmレンズは50mmの代わりになるといえばなるのです。
ライカQ2なんて28mmのレンズで75mmの画角までクロップして撮影できますから凄いですよね。
結論
それで結局どっちなの?という話なのですが、僕が何の単焦点レンズも持っていなかったら苦渋の決断の末にNIKKOR 50mm f/1.8 Sを買うと思います。
NIKKOR 50mm f/1.8 Sの方がメインの被写体が際立つのでミラーレス一眼で写真を撮る楽しさがわかりやすいという印象があるからです。
それに加えてNIKKOR 50mm f/1.8 Sの方が価格が若干安いです。
これでニコンの高い光学性能を持つSラインレンズに属するというコストパフォーマンスの良さも見逃せませんね。
僕はZマウントのf/1.8単焦点シリーズがすっかり気に入ってしまったので、他の焦点距離もうっかり生えてきそうで心配してます。

レンズ選びの参考になれば幸いです♪それでは良いフォトライフを!