2018年9月にニコンから初めてのフルサイズミラーレスカメラNikon Z7がデビューしてから早いものでもう3年目になります。
2018年はニコンとキャノンがフルサイズミラーレスカメラ市場に本格的に参戦したターニングポイントでもありましたね。
ミラーレスカメラで先行しているソニーや昔からのライバルであるキャノンに対して、現時点でニコンのミラーレスカメラはやや遅れをとっているといわれることが多いですが僕は特に悲観していません。
カメラは趣味の道具なので性能ではなく好きなものを使っているという理由意外にも、僕が使う用途にちょうど良いカメラがニコンZでした。
今回は僕がニコンZマウントシリーズを使い続ける理由について書いていきたいと思います。
ニコンZマウントレンズが使える唯一のボディ

ニコンZマウントはマウント径が55mmの大口径、フランジバックが16mmと短く設計されているのが特徴です。
フランジバック(flange back 、英語では普通flange focal length )とは、レンズ交換式のカメラにおいて、レンズマウントのマウント面から、フィルムもしくは撮像素子までの距離のことである。
Wikipediaより

各社のマウント径とフランジバックの比較です。
メーカー | フランジバック | マウント径 | 年代 |
---|---|---|---|
キヤノンRF | 20mm | 54mm | 2018年 |
ニコンZ | 16mm | 55mm | 2018年 |
ソニーE | 18mm | 46mm | 2010年 |
キヤノンEF | 44mm | 54mm | 1987年 |
ニコンF | 46.5mm | 44mm | 1959年 |
ライカM | 27.8mm | 43.9mm | 1955年 |
ニコンは1959年からFマウントを守り続けてきたわけですが、新しいZマウントで一気にレンズ設計の根本の部分を変更しています。
カメラボディのマウント径が大きくてフランジバックが短いほどレンズの設計に有利だとされていますので、ニコンはマウントを変えたことでさらに光学設計の良いレンズをガンガン作りまっせという意気込みが伝わってきます。
ニコンZのボディでここの表にあるレンズはマウントアダプター経由で全て使用することができますが、ニコンZマウントレンズは他社のカメラボディでは使用することができません。
その理由はニコンZマウントが55mmの大口径でフランジバックが16mmなので、他メーカーのボディに物理的に装着できないからなのです。
なのでニコンZマウントレンズを使いたいであれば、ニコンZのボディを買いましょうよというニコンさんからの囁きが聞こえるわけです。笑
ニコンZボディのマウント設計はオールドレンズの母艦としても優秀で、世に出回る数多くのレンズをマウントアダプター経由で装着することができます。
視認性の良いビューファインダーがあるのでマニュアルフォーカスでも違和感なくピント合わせが可能です。
話がちょっと逸れましたけれどニコンZシステムの魅力はZマウントレンズのラインナップにあると思います。
風景写真に最適

僕がニコンZマウントに感じている魅力は旅先の風景写真を撮るシステムとして色々とちょうどいいということです。
僕は動画撮影はほとんどしませんし動きモノも滅多に撮らないので、ボディの性能というよりはレンズに重きを置く視点かもしれません。
僕がニコンZマウントを選ぶ理由はざっくりと以下の点です。
- ①防塵防滴で堅牢性が高くグリップしやすいボディとレンズ
- ②値段が高すぎないこと
- ③レンズの設計思想が撮影スタイルに合っている
①に関してはNikon D750の時から慣れて親しんでいたので期待通りの感触です。
ミラーレスになって軽くなったのでグリップやホールドに関しては楽になったと思います。
②に関しては、僕は海外旅行やアウトドアシーンでカメラを使うことが多いので盗難や破損にあってもなんとか立ち直れる金額のカメラにしたいというのがあります。
海外旅行で適応されるクレジットカードの利用付帯保険の携行品補償の上限金額が一個当たり10万円というのもあるので、アクシデントがあった時にそれくらいの金額でカバーできる道具ということは意識するところではあります。
③に関しては、フルサイズミラーレス各社のレンズの焦点距離やレンズの設計思想が微妙に違うのがカメラ選びの面白いところでもあります。
僕はニコンのF4通しのズームレンズシリーズとF1.8単焦点レンズシリーズが好きなのでニコンZマウントシステムを使っています。
F4ズームレンズとF1.8単焦点レンズシリーズに関してはこの後説明していきますね。
他社に比べてAFがやや弱いといわれているニコンZシステムですが、一眼レフのニコンD750と比較しても特に劣っている感じはしません。三脚に据えた風景写真であればAF性能は必要ありませんし、スナップくらいなら最近のカメラであればメーカー各社全く問題ないAF性能を備えていると思います。どこまでのAF性能をミラーレスカメラに求めるのかは自分の撮影スタイルと照らし合わせてよく検討する必要があると思います。

僕はZ6で割と満足しているので値下がりした中古を買い増して長く使っていくというのもありかなと思っています(記録メディアがXQDというのがネックですが)。
ニコンの広角レンズは唯一無二

風景撮影がメインだったらニコンZマウントで一番使ってみてほしいなと思うレンズはNIKKOR 14-30mm f/4 Sです。
フルサイズミラーレスで14mmはじまりの広角ズームで、出目玉じゃなくて割と軽量なレンズはニコンZマウントだけです。
去年はこの上位ラインナップにNIKKOR 14-24mm f/2.8 Sというぶっ飛んだ性能のレンズが出てきました。
フルサイズミラーレス各社の純正広角ズームレンズを軽く比較してみましょう。
レンズ | 重量 | 最安価格 |
---|---|---|
Canon RF15-35mm F2.8 L IS USM | 840g | 265,000〜 |
Canon EF16-35mm F2.8L III USM | 790g | 226,376〜 |
Canon EF11-24mm F4L USM | 1180g | 381,815〜 |
Nikon NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S | 650g | 269,800〜 |
Nikon NIKKOR Z 14-30mm f/4 S | 485g | 134,998〜 |
Nikon AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED | 970g | 229,800〜 |
SONY FE 16-35mm F2.8 GM SEL1635GM | 680g | 223,364〜 |
SONY FE 12-24mm F2.8 GM SEL1224GM | 847g | 304,552〜 |
SONY Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS SEL1635Z | 518g | 126,800〜 |
広角レンズのラインナップは各社の設計思想が分かれるところで、まさにコマーシャルフォトのキャノン、報道のニコンといわれる所以があるなと勝手に思っています。
キャノンとしては一眼レフ時代から35mm側まで幅広く使えることに価値を見出しているような気がします。
逆にニコンは14mmの広角で風景をダイナミックに切り取ること力を入れているのではないかなと思います。
ソニーはどちらかというとキャノン寄りなラインナップですね。
こうしてみると軽量コンパクトで性能と値段の釣り合いが取れているのがなんとなくNIKKOR 14-30mm f/4 Sという気がしてきませんか…?!笑
最新型のF2.8通しの広角ズームレンズにすると値段が倍に跳ね上がりますし、11mmや12mmはじまりのレンズにするとさらに重くて高額になります。
星景写真を撮影しないのであれば広角レンズでF2.8の明るさは僕にとって必要ないと思ったので今のところNIKKOR 14-30mm f/4 Sで満足しています。
詳しいレビューは別に書いたので参考にしてみてください。
F1.8単焦点レンズシリーズの魅力

ニコンZマウントのF1.8単焦点レンズシリーズもまた魅力的なラインナップが揃っています。
10万円前後という価格帯でありながらニコンが認めた高い光学性能を持つSラインという分類に属するのが、このZマウントのF1.8単焦点レンズたちなのです。
今までFマウントを使用していた僕からすると、実売7万円くらいのNIKKOR 50mm f/1.8 Sにナノクリスタルコートが施されているということにニコンの本気を感じました。
ナノクリスタルコート(通称ナノクリ)は、Fマウント時代は10万円以上の比較的高級なレンズに搭載されていましたが、Zマウントのラインナップでは価格帯の安いNIKKOR 50mm f/1.8 Sや、キットレンズのNIKKOR 24-70mm f/4 Sにも搭載されています。

初めて買ったFマウントレンズのナノクリの金色バッジが眩しく見えましたものです。ナノクリは反射を抑制して逆光に強くなるレンズコーティングなのですが、キットレンズについてくるのはやばいですね。

ZマウントのSラインレンズの外観の特徴はピントリングの下部にあるシルバーラインの切れ込みと、A/Mスイッチ下部にあるNIKKOR Sバッジです。
Fマウントに比べてとてもシンプルになりました。
最初の頃はちょっと地味な印象でしたが、最近ではシンプルなデザインが良いなと思い時折輝くシルバーの切れ込みも気に入っています。

僕が思うニコンZマウントのF1.8単焦点レンズの魅力としては以下の点です。
- ①絞り開放からピント面の解像度がピークに近い
- ②軸上収差が少ない
①に関しては、従来の多くのレンズは開放がフワッと、絞ればパキッと写るといった感じでしたが、ニコンZマウントは開放から本当にシャープな描写を見せてくれます。
僕の考えとしては開放F1.4のレンズで絞りを1〜2段以上絞らなければ求める描写にならないレンズよりは、開放F1.8のレンズで開放からシャープに写った方がありがたいです。
②に関しては、白い部分にフリンジが出なくなったことがよかったと思っています。
白い玉ボケの内側が緑色になったり、自然風景の木々や葉っぱの境界線が紫色になったりすることがほとんどなくなりました。
フリンジはLightroomで簡単に除去できますが、違う色を被せているだけなのでやや変色したり完璧に取りきれないこともあるので、フリンジは出ないに越したことはありません。
Zマウントレンズで撮影した写真でも拡大して厳密にみると僅かにフリンジが見られますが、従来のレンズと比べて圧倒的に少なくなったという印象を受けます。
細かな描写については別の記事を参考にしてみてください。
あと忘れずに書いておかなければならないことは、ニコンZマウントの逆光耐性はズームレンズ単焦点レンズ問わず最強だということです。
この部分はFマウントからの明確な進化だと思います。

ニコンZマウントレンズは価格帯が安いNIKKOR 50mm f/1.8 SやNIKKOR 24-70mm f/4 Sでも防塵防滴のシーリングをきっちりと配置していることに好感が持てます。
Zマウントレンズの口径やフランジバックやレンズを見てわかる通りニコンはレンズの設計を第一に考えてカメラを作っているのだなと思いました。
おわりに
F4通しのズームレンズ、F1.8の単焦点レンズで旅先の風景を納得のいく画質で撮影できるシステムを考えたときに、僕の場合はニコンZマウントという選択になりました。
Zマウントレンズのラインナップはまだまだ充実しているとは言い難いのですが、現状でも魅力的なレンズがたくさんあると思います。
デジカメ市場の縮小とコロナウイルスのダブルパンチでニコンが赤字でヤバいというネットニュースが話題になりましたが、ニコンはこれからも魅力的なカメラとレンズを作り続けて頑張ってほしいなと思います。
ニコンZで撮影した旅先の写真はこちらです。
ニコンFマウントはライカMマウントと同じくらいの歴史があります。35ミリ判一眼レフカメラで独自設計のレンズマウントを現在まで50年間継続して製造するメーカーはほかになく世界最長なのだそうです。